私の専門は保育所建築の設計だが、先日、児童デイサービスの設計依頼をいただき、こどもたちの「障がい」について考える機会を得た。そこで出合ったのが本書である。
筆者は第一びわこ学園の園長を勤めた医師で、「筋緊張で頭が反り返り一本の丸太棒のようになっている子、水頭無脳症で大脳や小脳が全く無い子」など、重い障がいを持つこどもたちとの暮らしの中で、「こころ」とは、「いのち」とは何かを発見していく日々を綴る。
後半では、「この子らを世の光に」と語った創設者糸賀一雄の奮闘を紹介し、日本における重症心身障害児施設の苦難の歴史が語られる。
そして、たとえ脳がなくとも、「からだ」が快適な状態を作ることは可能で、それは「いのち」が気持ちよく存在していることであると説き、「死んだほうがまし」なのではなく「生きている喜びがある」から、それを実現していくことが社会の役割であると結ぶ。
私にとって、こどもたちの「障がい」を考える道標となった一冊である。
(大塚謙太郎)
BOOK DATA
重い障害を生きるということ
【著】高谷清
価格●735円(本体700円+税)
出版●岩波書店
発行●2011年10月
ISBN●978-4-00-431335-9
17.4×10.6cm、196頁
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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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