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保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

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「めぐみ幼稚園」様について NO.6

ちいさなきもちを受けとめる
「ひろびろデッキ」は、保育室と同じく、地面から床を50cm高く設定しており、運動場とは3段の踏み段でつながっている。正面の外観からは、軒の低さを感じさせないが、ひとたび屋根下に入れば、茅葺民家の軒下を思わせる囲まれた感じのする空間で、最も低いところで床面高さから190cm弱に設定されている。旧園舎の間取りに対し、南側に廊下を配置しなおすことで生まれた「ひろびろデッキ」だが、これによって旧園舎に見られた保育室への豊かな彩光が難しくなるため、その直上に天窓と高窓を配置し、複数の経路で保育室に光を導いた。そのため、保育室が平均天井高の比較的高い勾配天井となり、開放的な場所となったので、「ひろびろデッキ」には、その逆の性格を持たせるため、天井をできうる限り低くし、内外をつなぐ連続性を保ちつつも、落ち着いたスペースとなるよう意図した。旧園舎前で行われていた様々なことが、天候などに左右されることなく、ゆったりと行えるようになったほか、今まで保育室の中だけに留められていた遊びも、季節の風を感じながら、ここで展開することができるようになった。
 いのりのおへやに作られた「えほんのあなぐら」は、天井高さが120cmで、床を15cm掘り下げた、およそ3畳ほどのコーナーだ。床にコルクタイルを敷き詰めた、こどもサイズのスモールスペースである。三方の壁すべてを作り付けの本棚とし、およそ1400冊のえほんがならぶ。旧園舎では、たくさんの蔵書を持ちながら、こどもたちの身近に置くことができなかったが、ここにくれば、いつでも、どんなときでも、えほんの世界に飛び込むことができる。きっと、記憶の中で生き続ける、思い出の一冊に出会えるだろう。
 それから、生活調査時に、保育室内でのお遊戯の輪に入らない園児が数名いるのが気になっていたので、押入れ下におよそ1畳分のスペースとして「かくれがこーなー」や、「おきがえこーなー」を地窓とセットで設け、複数人での遊びが発生しにくい小面積にすることによって、集団と適度な距離感を保ちながらも、ひとりでいたいときの居場所を保障しようと考えた。
 このように、いくつかの違った性格の空間を想定し、こどもたちが自分の気持ちにあった居場所を、自分の意思で選択できるようにした園舎は、プラン的には単純な片廊下型でありながら、断面計画を中心にしたいくつかの調整、廊下幅を広く取って用途性を持たせた上で、間口いっぱいに開放できる木製建具で保育室との連続性を確保したことによって、保育と園児の行動の幅が広がり、画一的でない生活を導き出した。
 そのほか、細部計画においては、扉の指詰め防止処理、出隅の丸面取りなどをはじめとする怪我の防止対策や、網戸の破れ対策など教諭の手間を軽減する対策をしっかりととった。過剰なのではないかと考える向きもあるが、こどもの行動に対して禁止や抑制を与えすぎて、保育が後ろ向きで窮屈なものになる事のほうが、こどもにとっての不利益になるだろうと考えた。


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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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# by chibicco-plan | 2019-04-16 10:00 | ●保育園設計の考え方

「めぐみ幼稚園」様について NO.5

保育の外縁を支える
旧園舎の設計は、ヴォーリズ事務所の手によるもので、北側にロッカーが並ぶ廊下を設け、南側に大きな掃き出し窓のある明るい保育室を配置する明快なプランで、地窓を設けてこどもの生活領域に風を導く工夫も施され、こどもたちの良質な生活空間を確保しようとする意図にあふれる設計であった。しかしながら、私たちが生活調査を行う中で、室配置と生活動線がうまく整合していないことに気が付いた。
 下の3枚の写真は、建て替え前の旧園舎を視察させていただいた時のものだ。
タオル掛けにタオルを掛ける等の朝の生活準備、手足を洗う、段に腰かけて靴を履く、段に集まって先生のお話を聞く、送迎の保護者が集まるなど、保育の外縁を構成する様々な行為が、園舎前のスペースで行われていた。残念なことに、使用頻度が高く、生活の交差点ともいえるその重要な場所には、屋根がなく、短い軒にコンクリートの土間があるだけという状況だった。私が「雨の日のお迎えはどないしてはりますか。」と問うと、「保護者さんは傘を差して待ってはります。」と至極単純な会話になってしまった。長い時の中で、それは不都合なことではなく、当たり前のことになっていた様子である。
生活調査の結果、園児が保育室間を自由に行き来することが多い保育スタイルであること、玄関があるにはあるのだが、手狭なために、登園動線を運動場のある南側からのリビングアクセスとしていて、北側廊下に設置されているロッカーに至るためには保育室を縦断する必要があること、本来廊下で行う事を想定していたであろう、タオル掛けやコート掛けなどの生活準備が、南側の屋根なし土間で行われていたことなどがわかった。
 私たちは、建物の間取りを、本来の生活の動きに従わせるため、南側に深い軒の出とともに、「ひろびろデッキ」として多用途に使える幅広の解放廊下を設けて保育室を北側に配置する計画とし、保育の外縁をサポートできる園舎を目指そうと考えた。


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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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# by chibicco-plan | 2019-04-09 10:00 | ●保育園設計の考え方

第22回木材活用コンクール受賞決定のお知らせ

4月1日、第22回木材活用コンクール受賞決定がプレスリリースされ、木質開拓賞「日本木材青壮年団体連合会会員賞受賞」を受賞することが決定いたしました。
今回受賞が決定したのは「きのぼりほいくえん」で、「社会福祉法人しらゆり会」様、「西田工業株式会社」様、「株式会社徳田銘木」様、そして私たち「ちびっこ計画」の共同によるものです。
表彰式等は後日実施される予定です。

木材活用コンクール公式ページは、
こちらです。

受賞作品は、
こちらです。

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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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# by chibicco-plan | 2019-04-05 15:02 | ●お知らせ

「めぐみ幼稚園」様について NO.4

「本物」を使う
 私たちの設計スタイルは、園の一日の生活の様子を拝見する生活調査と、先生方からお聞きするご要望、そして教諭や保育士の皆さまとのワークショップの成果などを材料にして、正解へとにじり寄っていくというものなので、あまり冒険的な設計にはならない。私たちは、保育の質というものは、ソフトとハードの総合点で決まるものだと考えている。ソフトである保育のやり方に、ハードとしての建築が寄り添っていなければ、質の高い保育にはならないのは当然のことで、それはそのままこどもたちの不利益に直結する。そんな中、少し頑固に提案させていただくことがひとつだけある。こどもたちのために、「本物」の材料を使おうということだ。
 私たちが、「本物」ではないと考えるのは、木目調ポリ合板とか、フローリング調ビニルシート等の、いわゆる「似せもの」のことだ。残念なことは、「本物」の材料の物性が、ほとんどそれに劣る上、価格も高いという点である。
 こどもの建築では、木は本物の代表格でもあると同時に敬遠される材料の代表格でもある。裸足保育をする園では、床に木を使うと足の裏に削げが刺さる。板張の節で怪我をする。丸太の背割りに手を突っ込んで抜けなくなる。木はメンテナンスが必要だし、掃除も大変だ。家具を引き摺れば木の床は傷だらけになるし、物を当てれば木の壁はへこむ。敬遠される理由を挙げれば限がない。「本物」には、必ずリスクが付きまとう。なぜ、それでも「本物」にこだわるかというと、大人として、そして子の親として、こどもたちが「本物」を知る前に、似せものを見せたくないと考えるからだ。そしてもうひとつ、「本物」につきまとうリスクの裏には、子どもたちの成長の機会が隠れているからだ。めぐみ幼稚園では、丸太の背割りでの怪我や、板張りを汚したり痛めるなどの失敗を、こどもたちの成長に資する自然物の教えとして、積極的に捉えていくことが確認された。
その一方で、保育室はよごしてなんぼという側面もある。床や壁に木材を多用すると、誰しもお部屋を美しく保ちたいという気持ちがあるから、せっかくきれいにできあがったお部屋を汚してはいけないと、自然に子どもたちの行動を制約するような保育になり、子どもたちが窮屈な生活を強いられるケースも多く、それでは本末転倒である。水は絵の具などを多用する製作遊びを、汚れを気にせず、思う存分楽しむことができるよう、保育室の床はビニルシート、壁はビニルクロスで仕上げ、清掃を容易に行えるようにした。材料ひとつで保育が変わってしまうのである。保育の考え方に応じた適切な材料選定は、とても重要だ。


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# by chibicco-plan | 2019-04-02 10:00 | ●保育園設計の考え方

「めぐみ幼稚園」様について NO.3

30本の丸太、30通りの姿
 赤いもの、白いもの、あばたのあるもの、節のあるもの、つるつるのもの、ぼこぼこのもの。様々な表情を見せる30本の丸太群が、この園舎の大屋根を支えている。均質化の時代を生きる子どもたちに、ONLY ONEになれと歌い聞かせるのなら、違いこそが本物の証だということを、私たち大人は彼らに伝えなければいけない。京都北山から伐り出された様々な表情をもつ30通りの姿を持つ丸太群は、違うことの美しさを子どもたちに黙したまま語りかける。目で見、肌で感じ、ここに暮らす子どもたちが違いを認められる大人に育っていく、その一助になればとてもうれしく思う。
『公共建築物等における木材利用の促進に関する法律』の施行より8年、民間の幼稚園や保育所の木質化も、徐々にではあるが進みつつあるようだ。法制化が遅すぎたという感は否めないが、たいへん好ましいことだと思う。
 しかし、ご承知の通り、幼稚園や保育所をはじめとする乳幼児のための建築では、2階以上に保育室等を設けようとすれば、防火上の制約が課せられ、丸太を柱として使うことができなくなる。保育所はもちろんのこと、特に幼稚園では大きな運動場が必要で、市街地での限られた敷地面積では、平屋建てで計画することが難しく、その意味において、丸太柱が織り成す保育空間は贅沢な造りだといえる。
 30本の丸太のうち、最も太くて長いものが、西端にある「いのりのおへや」の8本だ。直径およそ40cm、高さは5mを超える。身長1mのこどもたちから見れば、「長い」というより「聳える」に近いのではないかと思えるそれを、てっぺんまで登りきってしまう子がいるらしい。それも一人や二人ではないとのこと、先日お訪ねしたときも二人が二本に分かれてチャレンジ中だった。背割りに手を掛けて、両足で丸太を挟みこんで、器用に登っていく。想定外である。きっと天井に達した時の達成感は素晴らしく大きなものに違いないし、眼下に大人たちを見下ろす気分はさぞ爽快だろうと思ったのだが、よくよく考えてみると、柱に登るこどもは、そのようなことで登っているのではなく、実は猿が木に登るが如く、動物的な本能が作用しているだけなのかもしれず、こどもの行動をなんでも意味付けしてしまおうとする、退化した大人の貧困な発想に我ながら呆れた。もしそうだとしたら、登ることを制止することは、動物的本能を抑止するということなる。とにかく、めぐみの保育は、この想像を超えたこどもたちの行動をしっかりと受け止め、それを受容する。その懐の深さが、めぐみ幼稚園の大きな魅力のひとつだと言える。彼らが大人になって、その柱と再会した時、その丸太の変わらぬ存在感と重ね合わせて、自身の存在を再確認することができるのではないかと、思ったりしている。人生の拠り所として存在し続けることもまた、園舎に与えられた大きな役割のひとつだろう。


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保育園、保育所の設計専門
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# by chibicco-plan | 2019-03-26 10:00 | ●保育園設計の考え方