人気ブログランキング |
ブログトップ

保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

chibiplan.exblog.jp

日々の雑感:重要でない文化財

 役行者が開いたとされる、生駒山宝山寺。修験道の霊気が立ちこめるこの聖地に、突如として姿を現す擬洋風の客殿がある。明治17年に宮大工の手によって造られた、重要文化財『獅子閣』である。世にも珍しい史学科出身の建築士である私が、その薀蓄をたれるかと思いきや、そうではない。この『獅子閣』の裏手に、「こっそり」佇むあずまやがあるのをご存知だろうか。薄く、小さく、繊細に、存在感を抑え、庭木の間でかくれんぼをしているような愛らしい小建築だ。「ひっそり」ではなく「こっそり」なのである。
 とてもカワイイその屋根は、吹けば飛びそうな軽快さで、さらにカワイイその丸太柱は、華奢な体でがんばって屋根を支えている。そしてこの上もなくカワイイその軒は、限りなく低く、大人では頭を下げないと入ることができない。顔をあげれば、しっとりとしたやさしい闇が、客人を迎え入れてくれる。こんな木々とあずまやが、もし保育所の裏庭にあったら、どれほど素晴らしいだろう。
 私は、子どもたちの暮らす建物は小さくあるべきだと、常々思っている。こどもは狭いところが好きだとよく言われるが、体が小さいのだから、当たり前の話なのである。ついこないだまで、母のおなかにまるまっていたわけで、狭いところが好きというよりも、大人スケールの空間が大きすぎるのだろう。くつも、ぼうしも、かばんも、いすもちっちゃいのに、部屋だけが大人サイズというのは、どう考えてもおかしい。
 そんなことを、ぼんやりと思いながら寺を辞した。帰り道、管理人さんとすれ違ったが、この粋なあづまやが、指定文化財であるかどうかは尋ねなかった。これが重要であろうがなかろうが、文化財であろうがなかろうが、いいものはいい。

 小さくあること。

 大が小を兼ねることができない保育所建築において、私たちがしっかりと考えていくべき大きな課題である。

(大塚謙太郎)

a0279334_15364440.jpg


●---------------------------------------------●
保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
●---------------------------------------------●
by chibicco-plan | 2012-10-01 15:38 | ●日々の雑感
<< お知らせ:建築仕上げ改修監理技... おすすめの本:『発達障害の子ど... >>