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保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

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日々の雑感:箱木千年家

 あまりにも古いので、本当に1000年経っているかどうかはわからないらしい。応永年間にはすでに存在したらしく、築600年は下らないというところか。現存する日本最古の住宅である。30年で住宅を建てかえてしまう現代の感覚からすれば、1000年も600年も、ものすごく古いということに変わりはない。
 茅葺屋根のこじんまりした建物で、高さ1.6mほどしかない軒をくぐって中に入ってみれば、柱には煤が厚く付着しており、ぬめぬめとした黒光りを放っている。大黒柱はなく、同じ寸法の柱が整然と並んでいる。大黒柱という風習が定着する以前の建築なのである。未だ縦引きの鋸(のこぎり)が無かった時代の建築であるから、床板は鐇(ちょうな)斫りの板である。当時の一般的な住居は、土間の上に蓆を敷いて生活する土座であったはずだから、一見粗末に見えるこの住宅も当時は高級住宅だったに違いない。
 土間があり、おくどさんがあり、縁側があり、障子があり、光があり、そしてやさしい闇がある。口で言うほど簡単にはいかないことは理解しているつもりだが、こんなつくりの保育園ができれば、こどもたちはより豊かな生活が送れるだろうと思う。保育園は施設ではなく、一日の大半を過ごす住まいであるのだから。日本では戦後長らく、幼稚園と同じような豆腐型の建物に調理室をくっつけたものが保育園とされてきた。そして、時間とともにそれが当たり前となってしまった。時代と制度が許さなかったとはいえ、生活の場であるはずの保育園がそれで正しいはずがない。

 帰り際に買い求めた絵葉書には「題字 49代 箱木勇」とある。この建築は、長きにわたって脈々と受け継がれてきた、箱木家の歴史そのもののようでもある。
 この住宅の所在地は神戸市北区山田町の衝原ダム湖のほとりで、正式名称は『重要文化財箱木家住宅』というらしいが、『千年家』といったほうが通りがよい。自動車で三宮方面から新神戸トンネルを抜ければあっという間に到着することができる。やさしい闇を感じていただきたい。

(大塚謙太郎)
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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2013-05-07 22:58 | ●日々の雑感
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