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保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

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日々の雑感:保育園は迷惑か

 ある児童公園の隣に住む高齢者が、公園で遊ぶこどもたちの声が喧しいと、市役所に再三にわたって訴えたところ、役所は「声を出して遊ばないように」との立札を建てた。やがてその場所では誰も遊ばなくなった。公園で黙って遊べというのは、かなり無理な注文である。喋らずに電話しろと言うのに近い。
 ある保育学の大家が、その高齢者にインタビューしたところ、「昔はこどもの声は気にならなかった。」そうで、その理由は、「誰が遊んでいるかが声でわかったから」だという。ここに大きなヒントがある。
 声の主が誰であるのかがわかれば、こどもの声は騒音ではなくなるのだ。大きな声ではあるのかもしれないが、声の主を想像して孫を思いやるような気持ちになれるのだという。先日開催された、こども環境学会東京大会のシンポジウムで耳にした話である。

 こういった苦情の話は、保育園を設計すれば必ずついてまわるので、私たちはそれを予測して設計する。臭いが気になりそうな場合は、調理室の排気の位置はできるだけ園庭側や屋上へ持っていき、それができない場合は消臭装置を取り付ける。音が気になりそうな部分には、防音サッシを取り付ける。近隣のプライバシーが気にりそうな場合は、目線を外して窓をあける。路上駐車対策で、時には保育面積を犠牲にして駐車場や駐輪場を確保することもある。
 先日竣工した保育園では、建物の配置をロの字型にして中央に中庭型の園庭を配し、あらゆるものを中庭に向けた。園舎が園庭を囲んでいるので、臭気や声、砂埃等も敷地外へは漏れにくい構造である。そして屋外遊戯場をギリギリまで切り詰めて、駐車場を確保した。ここまでやっても不十分だと言われるのが、こどもたちが置かれている現状なのである。とても悲しい事実だが、多くの場所においてこどもたちは歓迎されていない。
 前述の高齢者が、常軌を逸しているのは明らかなのだが、それを言っても解決にはならない。
 私たち設計者ができるのはハードだけである。そして不十分なハードを補うのはやはりソフトである。餅つきに近隣住民を招待したり、週末に近隣の高齢者を招いて給食会を開いたり、園で作った焼き芋を配ったりと、多くの保育園が、それぞれのやり方で丁寧な近隣への気配りを行っておられる。

 保育園と近隣との濃密なコミュニケーションが、やはり一番の近道ということか。

(大塚謙太郎)
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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2013-05-14 01:11 | ●日々の雑感
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