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保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

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くじら雲の印象 その3

 お昼前、庭先でカレーライス作りが始まった。実の詰まった硬い人参を、最後まで根気よく切るこどもたちの姿が印象的だった。大人が電話帳を切っているぐらいの感覚かと思ったりしたが、自分で何かを成し遂げる嬉しさを、こどもたちは感じているのだろう。不揃いの野菜がたっぷり入ったカレーを、おいしくいただいた。
 この庭先空間と、それに連なる内外の境界としての縁側が、とても有意義なものであることを、こどもたちと一緒に調理することで再確認できた。くじら雲では、運動場はなく庭先があり、厨房はなく台所があり、廊下はなく縁側があって、保育室は8帖間なのだ。静かな時間は落ち着き、遊ぶときは縦横無尽に駆け回ることができる。民家を園舎に使うということは、場の大きさが、より、こどものスケールに近づくということであり、広い外部との組み合わせで、めりはりの効いた生活空間を実現させている。園舎(というより、おうち)では、板、畳、三和土と様々な床が子どもたちを迎える。狭い階段下に潜り込んだり、障子(指詰防止が施された木製戸より、はるかに自由で安全)を開け閉てして、部屋の大きさを変化させたり、山側の部屋では闇を得ることができたりと、多種多様な空間の選択ができる。広い場所があれば、狭いところ、明るい場所があれば、暗いところ、大小、硬軟、高低、寒暖、様々な空間が用意されている。入ってはいけない場所には、施錠するのではなく、飾りものを並べるなど、やさしいバリアが設けられている。そこでは、「入れない」のではなく、「入らない」という意志のある選択ができる。
 住環境の均質化が進む中で、様々な素材に触れ、空間を体験し、選択していくということが、「育ち」に繋がっているとすれば、建築や造園というものが、こどもたちの暮らしに、微力ながら貢献できているのかもしれない。このワークショップの中で、建築上の工夫にどれだけ意味があるのか、もしくは、建築に意義を見いだせない、といった思いを吐露された方がいらしたが、くじら雲のこどもたちに出会って、私は、少し、勇気づけられたような気持ちでいる。
 建築の専門家と、保育の専門家がひざを突き合わせて話しあうということは、とても有意義で、こどもたちの暮らしをサポートする者同士、これからも、さらに知識を深めていけたらと思う。

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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所

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by chibicco-plan | 2018-08-01 10:00 | ●保育園設計の考え方
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