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保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

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「めぐみ幼稚園」様について NO.5

保育の外縁を支える
旧園舎の設計は、ヴォーリズ事務所の手によるもので、北側にロッカーが並ぶ廊下を設け、南側に大きな掃き出し窓のある明るい保育室を配置する明快なプランで、地窓を設けてこどもの生活領域に風を導く工夫も施され、こどもたちの良質な生活空間を確保しようとする意図にあふれる設計であった。しかしながら、私たちが生活調査を行う中で、室配置と生活動線がうまく整合していないことに気が付いた。
 下の3枚の写真は、建て替え前の旧園舎を視察させていただいた時のものだ。
タオル掛けにタオルを掛ける等の朝の生活準備、手足を洗う、段に腰かけて靴を履く、段に集まって先生のお話を聞く、送迎の保護者が集まるなど、保育の外縁を構成する様々な行為が、園舎前のスペースで行われていた。残念なことに、使用頻度が高く、生活の交差点ともいえるその重要な場所には、屋根がなく、短い軒にコンクリートの土間があるだけという状況だった。私が「雨の日のお迎えはどないしてはりますか。」と問うと、「保護者さんは傘を差して待ってはります。」と至極単純な会話になってしまった。長い時の中で、それは不都合なことではなく、当たり前のことになっていた様子である。
生活調査の結果、園児が保育室間を自由に行き来することが多い保育スタイルであること、玄関があるにはあるのだが、手狭なために、登園動線を運動場のある南側からのリビングアクセスとしていて、北側廊下に設置されているロッカーに至るためには保育室を縦断する必要があること、本来廊下で行う事を想定していたであろう、タオル掛けやコート掛けなどの生活準備が、南側の屋根なし土間で行われていたことなどがわかった。
 私たちは、建物の間取りを、本来の生活の動きに従わせるため、南側に深い軒の出とともに、「ひろびろデッキ」として多用途に使える幅広の解放廊下を設けて保育室を北側に配置する計画とし、保育の外縁をサポートできる園舎を目指そうと考えた。


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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2019-04-09 10:00 | ●保育園設計の考え方
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