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保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

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『こどものためにで木ること』~内装に係る法規制を考える~ 2

 木は、私自身も大好きな材料の一つなのですが、保育園においては、木は敬遠される材料の代表格です。裸足保育が基本ですから、床に木を使うと足の裏に削げが刺さります。屋外デッキ等で、目地をとれば足の指がはまって爪がはがれます。壁に、羽目板を貼れば、節に手の指を突っ込んで怪我をします。丸太柱を立てれば、背割りに手を突っ込んで抜けなくなります。第一、木はメンテナンスがしにくいのです。掃除も大変です。家具を動かせば木の床は傷だらけになりますし、物を当てれば木の壁はへこみます。しみ込んだ落書きは取れませんし、こぼした味噌汁の染みは幾重にも重なって、ランチルームの床を彩るわけです。最近では、衛生状態に関して多方面から口うるさく言われます。床上にノロウイルスに感染した子供が嘔吐すれば、飛散に気を付けながら清掃して、次亜塩素酸で殺菌するわけですが、杉の無垢板であれば、目地や節に残留物がないかとか、繊維の間にしみ込んでいないかとか、いろいろと気になるわけです。人件費や材料費の急激な高騰で、コスト面も心配です。上げればきりがありませんが、これらが保育園で「木」を使いにくい理由です。

怪我ひとつで子どもは成長しますから、私はやみくもにけがの原因を排除することには賛成しません。むしろ、上手に怪我をさせてやりたいと考えています。それには、木が最適なのです。大けがをすることなく小さな怪我をさせてやれる、育ちの材料と言えます。

 使いやすくメンテナンス性の良いまがい物が評価され、木をはじめとする「本物」は、保育の現場ではあまり良い評価は得られません。

床材のためにけがをするこどもは、あらかじめ予測ができることもわかってきました。節や削げが悪いというよりは歩き方の問題なのです。歩き始めのこどもたちは、爪先立ちで歩いたり、すり足で歩いたり、ユニークな癖を持っているこどもたちがいます。

 そしてもうひとつ、「本物」につきまとうリスクの裏には、必ずこどもたちの成長の機会が隠れているからです。例えば、障子を使わせていただいたS保育園の先生におたずねすると、「障子紙は案外破りません。こどもたちは、たとえそれが1歳児であっても、硬いものと柔らかいものとでは触れ方が違います。初めは破れないか心配でしたが、今では障子紙を使ってよかったと思っています。」とこうおっしゃいます。こどもたちは自分の体に触れた感触で物を理解していくということがよくわかります。壁や天井の板張りにある節が、お化けの目に見えてきて怖くてお昼寝ができないというこどももいました。素晴らしい想像力です。



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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2019-05-21 10:00 | ●保育園設計の考え方
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