保育士の労働環境や労働条件というものは、他の福祉の仕事と違わず非常に厳しいものです。
保育士の定数は、0歳なら3人に対し1人、5歳なら30人に対し1人となっています。私などは、わが子1人を育てるのに四苦八苦の毎日です。子どもたち30人を1人で育てるというのは想像もつかない。
しかし、それは簡単なことではありません。十分な打ち合わせを重ねずに、ふんだんに木を使えば、「あいつらは描きっぱなしだ」と設計者は批判を浴びますし、施工者は、クレーム対応に走りまわらなければならないでしょう。そのような状況は、設計する前から簡単に予測がつきます。ですから、木を使う場合は、保育園の先生方との設計打合せで、保育の上でどこまでを許容するのか十分な確認が必要です。潤沢な予算がない場合がほとんどですから、予算配分上の検討も必要です。保育は器だけでは成立しませんし、保育士の先生方だけでも成立しません。ハードとソフトの総合点で、保育の質が決まるのです。だから、木がお好みでない場合や、さまざまな事情で許容が難しい場合は、直ぐに提案を取り下げます。ハードの点数が劣っても、ソフトで盛り返してもらえれば総合点としては、高くなるだろうと考えるからです。ここが前述の「できるだけ」の理由です。だから、一方的に木質化がよい、本物にしなければだめだと考えているわけではありません。保育現場の状況を考えずに、木はいい材料ですとお勧めするのは、設計者のエゴイズムに他ならない。どんなに本物を使おうとも、仕様の押し付けは確実にマイナス側に働きます。保育に対して木の持てる力を存分に発揮させてやるには、使い手の理解が欠かせないのです。保育園の木質化は、園の先生方・保護者・設計者・施工者が手を携えて考えていかなければ、成功しません。
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