空き教室利用の認定こども園が難しい理由
建築基準法施行令112条に異種用途区画があります。幼稚園の空き教室を利用した認定こども園では、幼稚園部分と保育園部分の間に発生し、体を挟まれればひとたまりもない巨大な鉄扉や重量シャッターを設置しなければならないのですが、調理室や事務室を兼用する場合などはどこで区画をすべきなのか特定することすらできません。
また、幼稚園の空き教室を保育所に転用すれば、それだけで用途変更確認申請が必要です。これは、保育行政の中で指導が徹底できずに無届の用途変更が多発したため、厚生労働省から用途変更をするように指導せよという通達が出たほどです。用途変更と言えども確認申請ですから、既存建物が緩和規定を除いて合法状態であるのが条件ですが、すんなりといく仕事はほとんどありません。
幼保一元化と言いながら、幼稚園と保育所は、建築基準法上の「類似の用途」にすら認められない異種用途扱いとなることは、認定こども園を普及させる上で検討すべき課題の一つだと思います。ただ、規制の内容はさておき、保育所と幼稚園がまったく違うものだとした建築基準法の考え方は評価するべきだろうと思います。
おわりに
こうして見て参りますと、いろいろと課題を抱えていて、簡単にいかない部分が多くあることがわかります。やいこしいのでやめとこかという方もいらっしゃることと思います。しかし、道が狭いだけで、閉ざされているわけではないのです。様々な立場で仕事をされている建築技術者の皆さんの少しずつの努力が、この道を拡げます。こどもたちのことも、木や森のことも、我々大人が取り組むべき課題という意味では同じです。親であろうがなかろうが、供給者であろうが消費者であろうが、分け隔てなく取り組む必要がある点でも同じです。そしてこどもが大人なるのに時間がかかるように、木もまた成木となるのに長い時間を要します。どちらも結果が出るのは、はるか未来の話です。はるか未来だからこそ今やらねばならない。私は、このお話の冒頭に「遅きに失した感がある」と申し上げました。これは、社会全体を批判して言ったのと同時に、自戒の念を込めて申し上げたのです。建築技術者の一人一人が取り組まなければ、進展しないことだからです。現在の林業や建築をとりまく状況を見て、過ぎてしまった時間が戻らないという単純な事実を、私たちは痛いほど理解しているはずですから。こどもたちのために、私たち大人が今で木ることを、見過ごさずにやっていきたいですね。
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