『近代建築』2022年8月号で、「保育建築の計画と設計」という特集が組まれ、私ども、ちびっこ計画で設計させていただきました、『森之宮保育園』さまと、『みどり丘こども園』さまが掲載されました。
近代建築社 (kindaikenchiku.co.jp)
居場所の保障~森之宮保育園~ロフト、かくれが、ホワイトルーム、フリースペース、キッズキッチンなど、児童福祉施最低基準にない室名が並ぶ。同基準が施行されて70年。子ども主体の保育を思うとき、子どもたちが暮らしの居場所を自由に選べるということが、今でも当たり前になっていないと感じる。11時間保育が常態化する生活の中で、居場所の主体的選択の保障は、保育建築に与られた重要な役割だろう。森之宮保育園では、子どもたちに異なった設えの複数の居場所が提供され、多様性豊かな保育が展開されている。その一方で、保育者の労働環境もまた重要だ。保育士工房、フレキシブルに分割できる個室群、調理室の乳幼児分離、オープン型事務室、子ども便所から独立した大人便所、更衣室の男女分離、相談室の設置など、管理諸室にも工夫を加えた。奇をてらわずに豊かな空間を目指す、当たり前の日常のための、当たり前の園舎設計を追求した。
暮らしを外へ~みどり丘こども園~建築の高気密化傾向をよそに、子どものたちの生活は、サッシを開け放つ感染症対応が基本だ。このスタイルが今後も続くと考えると、遮音を意図する開口部以外、気密性能の向上は事実上意味がない。むしろ積極的に外部開口部に木製建具を使い、風通しを向上させた。たいじゅのあとりえ、ひだまりライブラリー、かぜのおげんかんなど、半屋外空間に面積を割き、内外の境界を曖昧にすると、本棚やテーブルが置かれ、食事や読み聞かせ、昆虫の観察や製作遊び等、これまで室内で行われていた暮らしが、半屋外に滲み出してゆく。みどり丘の保育は、旧園舎の頃から外遊びに重きを置いていたので、子どもたちは自然に半屋外に適応した。季節の風とともに、子どもたちの暮らしがある。
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保育園、保育所の設計専門
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