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保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

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カテゴリ:●保育園設計の考え方( 15 )

「さくらづか保育園」様のご紹介

私ども、ちびっこ計画で設計を手がけました「社会福祉法人しらゆり会 さくらづか保育園」様をご紹介します。


あそびの発露

階段の下を利用した『えほんのあなぐら』、押入の下を利用した『かくれがこーなー』、床の高くなった『畳のステージ』、そして巨大な株立ちの皮むき丸太と、枝付の檜が林立する、『きのぼりほーる』。生活と遊びが溶けあった、以上児保育室棟の増築である。
吉野の銘木店で園長自ら選定した表情豊かな登り木には、こどもたちが鈴なりにしがみついている。たくさんの枝が突き出した檜材を前に、保育者が、施工者が、設計者が一堂に会して、登り、ぶら下がって、建て位置から枝の剪定までを体で考え、冒険と安全の狭間で悩み、家具職人の手で仕上げたものだ。
あなぐらのこどもたちは、寝そべりながらお気に入りのえほんを広げ、かくれがでは、家族ごっこが展開されている。ここには、計画された遊びではなく、自らの発露で遊ぶ、活き活きとしたこどもたちの自然な姿がある。構造は、敷地、前面道路とも狭隘で、極めて短い工期だったため、鉄骨造を敬遠し、燃えしろ設計を用いた木造準耐火2階建てとした。上階で暮らすこどもたちが、下階に気兼ねすることなく遊べるよう、木造の弱点である上下階の遮音性能に対して、サウンドカットシステムを用いた遮音床で補った。
ある保育講習会で、「保育士が設定したブロック遊びを終えたこどもが、『せんせい、もうあ
そんでもいい?』と言って活き活きと別の遊びを始めた。」という残念な話を聞いたことがある。耳の痛い話だ。よかれと思った保育そのものが、こどもたちの遊びを阻害していることがあるのではないだろうか。遊びの本質とはどのようなものだったのか、私たち大人は忘れがちである。幼い頃の薄れた記憶を手繰り寄せて、もう一度、思い出してみたい。


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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2018-10-23 12:05 | ●保育園設計の考え方

「母里保育園」様のご紹介


私ども、ちびっこ計画で設計を手がけました「社会福祉法人母里福祉会 母里保育園」様をご紹介します。

えほんと暮らす
「えほんがねえ、たくさんあるんですよ。」長年にわたって買い揃えたえほんをいっぱい読んでほしいという園長の希望は、園舎じゅうに散りばめられた「えほんコーナー」という形で実を結んだ。玄関脇に親子で読む「えほんのこべや」、廊下に「えほんのべんち」や「あるこーぶ」、はらぺこダイニング脇に床を掘り下げた「えほんのくぼみ」、保育室には押し入れ下を利用した「えほんのかくれが」を設え、「陽だまりでっき」にも本棚とベンチが置かれた。こどもたちは、いつでも、どんな気持ちの時にでも、えほんに触れることができる。一人でながめ、おともだちと囲み、先生に読み聞かせてもらい、暮らしに溶け込んだえほん棚から、きっと記憶の中で生き続ける思い出の一冊に出会えるだろう。

美しく暮らす
保育所はなにか雑然しがちなものだが、ここでは自然体ですっきりとした暮らしの時間が流れている。壁面収納を充実させ、扉付園児ロッカーを廊下に作りつけて収納物を見えなくし、さらに、よごれ物をきれいに収納するため、扉付パススルー棚を沐浴室や便所に設えるなど、収納物を視覚的にコントロールした。床に張られた素足に快適な杉の厚板が時間に優しさを与える。身長を遥かに超えるカプラの巨大作品が積みあがり、枝付丸太には、こどもたちが攀じ登ったり、ぶら下がったりしている。母里の園舎は、過度に主張せず、こどもたちの暮らしを、美しく、優しく包み込む。
「明らかにこどもが変わった。」と園長は言う。旧園舎の時と比べ、喧嘩が減り、ゆったりとした暮らしになった。ここでのこどもたちの生活そのものが、美
しくたゆたう時間を紡ぎ出している。

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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所

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by chibicco-plan | 2018-10-05 17:25 | ●保育園設計の考え方

「レイモンド西淀保育園」様のご紹介


私ども、ちびっこ計画で設計を手がけました「社会福祉法人檸檬会 レイモンド西淀保育園」様をご紹介します。

どんどんよごす
柔らかい肌触りと断熱性、そして、こどもたちに本物にふれてもらうために、保育室の床に30mm厚の杉板を使ったが、汚さないようにとの配慮からこどもの生活に制約をかけてしまい、保育が窮屈になるという懸念があった。園舎はよごしてなんぼである。園舎をきれいにお使いいただけるのはうれしいことだが、本末転倒にならぬよう、どんどんよごせる部屋を設えた。清掃の容易な床シート貼りの「ランチルーム兼キッズアトリエ」では、食事やクッキング、製作遊びなど多様なメニューに対応できる。また、大地のひろばと連続する半屋外の「おやねのひろば」は、床をタイル貼りにし、壁に光触媒による浄化作用のあるサイディングを用いて、絵の具や水などを多用する遊びを大胆に展開できるようにした。雨天時の遊び場や、雨具の着脱スペースとしても機能するピロティー空間だ。食べ物が床に散乱しがちな手づかみ食べの時期に、食べる喜びを思いっきり感じられる保育ができるよう、乳児の保育室内に食事コーナーを設けて乳児の食寝分離を行い、他の生活空間より清掃しやすい床材を選んだ。その他、玄関の正面に「クックギャラリー」を設けて加熱調理の様子を見ることができるようにしたり、屋外遊戯場の不足を補うため、2階と3階の屋上に土を載せた「おそらの園庭」を設け、草花や虫等の生き物と触れ合える場を補ったり、弱視でも昇降しやすいよう階段を色分けしたり、収納下を利用した「かくれがコーナー」を設け、時々の気持ちによって居場所を選べるようにする等の工夫を盛り込んだ。制約の少ない環境が、保育の幅を拡げ、その幅の広がりがこどもたちの豊かな生活につながっていく。
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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2018-09-26 10:49 | ●保育園設計の考え方

「子どもゆうゆう広場 みらくるちっぷ」様のご紹介

私ども、ちびっこ計画で設計を手がけました「特定非営利活動法人 出発のなかまの会 子どもゆうゆう広場 みらくるちっぷ」様をご紹介します。

あつまれキセキのかけら
低層木造密集地の旗竿敷地に、1階を児童デイサービス、2階をグループホームとし、事業主のたっての希望で、燃えしろ設計を用いた木造準耐火建築物として合築した。
敷地は四周を隣家に囲まれ、閉塞感があったので、玄関の延長を「とおりにわ」として「ひかりの中庭」と連続させて抜けをつくった。また、木造の弱点である遮音性を補うため、2階床と1階天井裏を強化石膏ボードなどを用いた遮音構造床としたほか、建物の色数を減らす、換気扇の擦過音対策、案内手すり、床の衝撃吸収、「かくれが」空間、多様な触感の床材、感覚統合遊具の懸架、離れの小部屋、空間の明暗、場の高低、素材の硬軟など、さまざまな個性を持つこどもたちに快適に使ってもらえるよう工夫した。
こどもたちは、私たちの期待通りの使い方と同時に、私たちの期待以上の使い方もしてくれた。安全、効率、コスト、機能など、有限性の総合体である建築が、彼らの無限性にどこまで寄り添えるのか。無限の成長を、有限がどこまで応援できるのか。大人たちの思いがこめられた建物は、「みらくるちっぷ」と名付けられた。「ちっぷ」とは韓国語で「家」。奇跡のかけらたちと、奇跡を忘れたことのない大人たちが集まる家。
(大塚謙太郎)
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ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2018-09-20 17:21 | ●保育園設計の考え方

「認定こども園松蔭おかもと保育園」様のご紹介

私ども、ちびっこ計画で設計を手がけました「社会福祉法人松蔭ミカエル福祉会 認定こども園松陰おかもと保育園」様をご紹介します。

ふたりだけの時間
正門から玄関を結ぶ長いスロープは「おはようさかみち」と名付けられた。長時間保育が常態化し、休日保育まで求められるいま、親子が一緒に過ごす時間は思いのほか少ない。自転車を降りてからバイバイするまでのわずかな間でも、さかみちを連れ立って歩きながら、ふたりだけの時間を大切に感じてほしいという思いを、このスロープに託した。その上部には、正門前から玄関まで屋根を連続して設け、荷物を抱えてこどもの手を引く保護者が、雨天時でも登降園しやすいようにしている。
レベル差のある敷地の特性を活かし、1階床レベルを「だいちのひろば(乳児園庭)」より低い位置に設定し、保育室からこどもの目線で外をのぞけば、地面を彩る草花が間近に見えるようにしたり、「はらぺこほーる」から2階へ至る階段下の床を掘り込んで「あなぐら」にするなど、こどもたちの目線の上下変化を誘う空間構成とした。「あおぞらひろば(3階屋上)」からは、巨峰が豊かに実る「ぶどうのひろば(2階屋上)」と、「だいちのひろば(1階園庭)」を見下ろせるようにし、上下階の連続性を高めた。
ファサードは、本園の母体である神戸松蔭女子学院大学の学舎の特徴を踏襲するとともに、阪神間の景観を形成する御影石を使った。神戸松蔭の品格を継承しながらも、地域の文脈を取り込んだ外観としたことは、住民の皆様と共に保育を展開していこうとする園の思いと符合するものとなった。

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ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2018-09-03 17:19 | ●保育園設計の考え方

もえしろ設計を用いた木造2階建ての保育園「エンゼルキッズ押切」様のご紹介

私ども、ちびっこ計画で設計を手がけました「学校法人森友学園 エンゼルキッズ押切」様をご紹介します。

0~3歳児までを預かる名古屋市独自の方式の保育所である。和の雰囲気を取り入れたデザイン、ステージやベンチにもなる階段、受入コーナー方式のスタイル、保育士自身がこどもの感覚に近づく必要があるという考えを形にしたかくれがコーナー、心が不安定になったこどもたちが落ち着ける小部屋、プラスチックではない本物の石や木といった材料を使うこと等、これまで学園が培ってきた「学校法人が考える保育所」を継承し具現化した。もえしろ設計を用いた構造を採用し、木造2階建て準耐火建築物の園舎としたのも、耐火建築物で陥りがちな「施設」的な場ではなく、「おうち」に近い「暮らしの場」を提供するという学園が実践してきたスタイルのひとつだ。存在感のある美しい木肌の独立柱は、21cm角の杉の無垢材である。手洗いは既製品を用いず、低年齢児の体型に合わせた寸法でステンレスで製作したり、VOCやウイルスを分解する性質としっとりとした質感を併せ持つ漆喰壁紙の使用、こどもの生活領域である床面付近の通風を行う地窓を設けること、上階の音を遮る遮音床工法の採用など、上質な暮らしを実現するための工夫で満たされた園舎である。新設園ながら開園後間もなく満員となり、今日もこどもたちの明るい笑顔があふれている。(大塚謙太郎)

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by chibicco-plan | 2018-08-20 12:00 | ●保育園設計の考え方

くじら雲の印象 その3

 お昼前、庭先でカレーライス作りが始まった。実の詰まった硬い人参を、最後まで根気よく切るこどもたちの姿が印象的だった。大人が電話帳を切っているぐらいの感覚かと思ったりしたが、自分で何かを成し遂げる嬉しさを、こどもたちは感じているのだろう。不揃いの野菜がたっぷり入ったカレーを、おいしくいただいた。
 この庭先空間と、それに連なる内外の境界としての縁側が、とても有意義なものであることを、こどもたちと一緒に調理することで再確認できた。くじら雲では、運動場はなく庭先があり、厨房はなく台所があり、廊下はなく縁側があって、保育室は8帖間なのだ。静かな時間は落ち着き、遊ぶときは縦横無尽に駆け回ることができる。民家を園舎に使うということは、場の大きさが、より、こどものスケールに近づくということであり、広い外部との組み合わせで、めりはりの効いた生活空間を実現させている。園舎(というより、おうち)では、板、畳、三和土と様々な床が子どもたちを迎える。狭い階段下に潜り込んだり、障子(指詰防止が施された木製戸より、はるかに自由で安全)を開け閉てして、部屋の大きさを変化させたり、山側の部屋では闇を得ることができたりと、多種多様な空間の選択ができる。広い場所があれば、狭いところ、明るい場所があれば、暗いところ、大小、硬軟、高低、寒暖、様々な空間が用意されている。入ってはいけない場所には、施錠するのではなく、飾りものを並べるなど、やさしいバリアが設けられている。そこでは、「入れない」のではなく、「入らない」という意志のある選択ができる。
 住環境の均質化が進む中で、様々な素材に触れ、空間を体験し、選択していくということが、「育ち」に繋がっているとすれば、建築や造園というものが、こどもたちの暮らしに、微力ながら貢献できているのかもしれない。このワークショップの中で、建築上の工夫にどれだけ意味があるのか、もしくは、建築に意義を見いだせない、といった思いを吐露された方がいらしたが、くじら雲のこどもたちに出会って、私は、少し、勇気づけられたような気持ちでいる。
 建築の専門家と、保育の専門家がひざを突き合わせて話しあうということは、とても有意義で、こどもたちの暮らしをサポートする者同士、これからも、さらに知識を深めていけたらと思う。

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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所

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by chibicco-plan | 2018-08-01 10:00 | ●保育園設計の考え方

くじら雲の印象 その2

 土や緑の少ない都市部でも、いのちに触れる体験をしてもらおうと、建築設計の傍ら、兵庫の都市部で、保育所ビオトープづくりに携わっている。本ワークショップの第2回でご紹介した「N保育園」もそのひとつで、保育士、法人理事の皆さんによるワークショップで図面を描き、池、水路、棚田を、こどもたちと一緒に造った事例だ。依田さんに「都会でもできるんだという、いい事例でした」との感想をいただいた。
 しかし、闇雲にハードとしてのビオトープを造ればそれでいいわけではない。設計者の悪癖であるが、作りっぱなしが実に多い。ビオトープは「池」という形態で普及しつつあるが、あくまで人工物であり、完全に自然化するのは難しい。干上がったり、あおこが大量繁殖したり、維持していく過程に様々な問題が発生する。造ることは簡単で、小さいものなら、こどもたちと一緒にのんびりと作業しても、1日あればできあがるのだが、維持していく保育士さんは、たいへんなのである。

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ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2018-07-30 16:52 | ●保育園設計の考え方

くじら雲の印象 その1

 「20人にしているんです。これより多くなると、こどもたちが1日をどう過ごしているか、わからなくなるんです。」くじら雲の定員を尋ねたとき、依田さんは、このような答えを返されたと記憶している。法定の最低基準に従って保育士数や、児童数を決めている、大方の保育所とは違い、明確な目的を持って決められた定員だ。芋を洗うような、都市部の保育所とは雰囲気が違う。くじら雲のような保育が、認可を外れないとできないというのは、なんとも歯痒い。
 焚き火スペースがよかった。適度な大きさで、背面が小さな崖になっているので、開放的でいて、かつ包まれたような空間になっている。本当に羨ましい場所だ。そこで、小さく穏やかな声で、輪になったこどもたちに話し掛けている依田さんの様子を見て、「保育」ではなく「当たり前の暮らし」を感じた。今までに見たいくつかの保育所では、大声で呼び掛ける保育士さん、という印象しかなく、保育所はこどもたちの「暮らしの場」という言い回しを、きれい事だと思い始めた矢先のことで、うれしかった。
 多くのこどもたちのリュックには、鈴がついている。こどもたちに尋ねると、熊除けの由。生きるための知識を、しっかり身につけている様子が伺えた。熊が出るほどの自然環境は、都心部のこどもたちから見れば、羨ましい限りだ。


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by chibicco-plan | 2018-07-20 13:12 | ●保育園設計の考え方

叱りをデザインする その2

『叱りをデザインする』 その2

 時として、「叱って」はならない場面もある。私は、都心部の子どもたちの環境に、ビオトープを普及させる活動に参加している。保育園で子どもたちと一緒に池を掘り、メダカを放流したときのことだ。「めだかさん、すくってみい。」というと、池の周りに座った子どもたちは、一斉に、そして素晴らしい勢いで上からメダカを掴む(掬うのではなく)。池や川で生物を掬い取った経験が無いために、「掬う」という動作がわからないのだ。力いっぱい掴まれたメダカは、その小さな手の中で潰れてしまう。そんな時、彼らは驚きと、恐怖と、後悔が入り混じったなんともいえない表情をする。叱ってはならない。彼らは、その瞬間、自らの手で生物のいのちを奪うという取り返しのつかない行為に、痛恨の涙を流し、心のすべてを揺らしてメダカに詫び、自分自身を激しく「叱って」いるはずだ。こうして彼らはいのちの尊さを学んでいく。
 子どもは遊びの天才だから、四角い部屋と平らな園庭でも無限に遊びを生み出していく、という考え方がある。子どもの能力に甘えきった、都合のよい解釈だ。山で転び、岩場ですりむき、池でびしょ濡れになり、押入れに潜って頭を強かにぶつけ、痛みとともに生きる力を育む。障子を破り、畳を傷め、穴を開けてしまった襖を修繕する労苦を体験して、物を大切にすることを覚える。管理者から敬遠されるものには必ずといっていいほど、「叱る」チャンス、つまり育つチャンスが潜んでいる。子どもは「叱ら」なくても大きくなっていく。でも、大きくなることと、育つことは意味が違う。「叱る」ことが苦手な人もいる。「叱り」方がわからない時もある。うまく「叱って」もらえなかった人には難しいことだ。そんな時は、大地に、素材に、いのちに叱ってもらえばいい。
 我々保育家や建築家は、そんな思想をもって子どもたちの環境を考えられているだろうか。保育家はもっと、園舎や園庭のことを考え、建築家はもっと、子どものことを考えるべきではないだろうか。それぞれの仕事の境界線を引いてはいけない。子どもの育ちの鍵は、その境界線が交わるところにこそ存在するのだから。使いやすさよりも、造形の美しさよりも、安全よりも、快適さよりも、保育家と建築家に、最も求められるデザインの考え方。「叱り」をデザインすること。我々は、まず自らを叱らなければいけない。いつか、成長した子どもたちに褒めてもらえるように。

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by chibicco-plan | 2018-06-28 16:06 | ●保育園設計の考え方