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保育園の園舎建築の設計専門家・ちびっこ計画の日々

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『こどものためにで木ること』~内装に係る法規制を考える~ 7

空き教室利用の認定こども園が難しい理由

 建築基準法施行令112条に異種用途区画があります。幼稚園の空き教室を利用した認定こども園では、幼稚園部分と保育園部分の間に発生し、体を挟まれればひとたまりもない巨大な鉄扉や重量シャッターを設置しなければならないのですが、調理室や事務室を兼用する場合などはどこで区画をすべきなのか特定することすらできません。

 また、幼稚園の空き教室を保育所に転用すれば、それだけで用途変更確認申請が必要です。これは、保育行政の中で指導が徹底できずに無届の用途変更が多発したため、厚生労働省から用途変更をするように指導せよという通達が出たほどです。用途変更と言えども確認申請ですから、既存建物が緩和規定を除いて合法状態であるのが条件ですが、すんなりといく仕事はほとんどありません。

幼保一元化と言いながら、幼稚園と保育所は、建築基準法上の「類似の用途」にすら認められない異種用途扱いとなることは、認定こども園を普及させる上で検討すべき課題の一つだと思います。ただ、規制の内容はさておき、保育所と幼稚園がまったく違うものだとした建築基準法の考え方は評価するべきだろうと思います。

おわりに

 こうして見て参りますと、いろいろと課題を抱えていて、簡単にいかない部分が多くあることがわかります。やいこしいのでやめとこかという方もいらっしゃることと思います。しかし、道が狭いだけで、閉ざされているわけではないのです。様々な立場で仕事をされている建築技術者の皆さんの少しずつの努力が、この道を拡げます。こどもたちのことも、木や森のことも、我々大人が取り組むべき課題という意味では同じです。親であろうがなかろうが、供給者であろうが消費者であろうが、分け隔てなく取り組む必要がある点でも同じです。そしてこどもが大人なるのに時間がかかるように、木もまた成木となるのに長い時間を要します。どちらも結果が出るのは、はるか未来の話です。はるか未来だからこそ今やらねばならない。私は、このお話の冒頭に「遅きに失した感がある」と申し上げました。これは、社会全体を批判して言ったのと同時に、自戒の念を込めて申し上げたのです。建築技術者の一人一人が取り組まなければ、進展しないことだからです。現在の林業や建築をとりまく状況を見て、過ぎてしまった時間が戻らないという単純な事実を、私たちは痛いほど理解しているはずですから。こどもたちのために、私たち大人が今で木ることを、見過ごさずにやっていきたいですね。




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保育園、保育所の設計専門
ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2019-06-25 10:00 | ●保育園設計の考え方

『こどものためにで木ること』~内装に係る法規制を考える~ 6

ビルインの認可保育所が難しい理由

ちいさな命をあずかる保育所ですから、児童福祉施設最低基準は建築基準法以上に厳しいものとなっており、その設備の基準が第32条に定められています。

2階以上に保育室を設置すると、無条件で2方向避難を要求されます。また、3階以上に保育室を設置すると内装制限がかかります。建築基準法の内装制限は、腰壁は制限なしですが、児童福祉施設最低基準のそれには腰壁の緩和規定がありません。よって、全ての壁について内装制限がかかると解釈するのが自然なのかもしれませんが、自治体によっては「腰壁は壁ではない」という解釈をする場合もあります。

国は、認可外保育所の認可化を進めようとしているようですが、この現状では簡単ではないでしょう。都市部の保育行政が抱える大きな課題です。園児の安全に直接かかわる規定がこの32条ですが、官民ともに扱いがずさんです。もちろん闇雲に厳格に解釈する必要はないですが、もう少し丁寧に取り扱うべき条文だと思います。

写真のH認定こども園は、鉄骨3階建てで、2・3階に保育室があるため、内装制限がかかり、腰壁は不燃木材を使いました。目が飛び出るような値段ですので、簡単に使える材料ではません。面積規定については、内法でとれという指導が基本です。内法で面積算定すると壁芯に比べて1割前後減りますので、注意が必要です。

多くの待機児童を抱える都市部の行政は、既存のビルの中に保育所を入れ込もうと公募をかけますが、なかなか進展しません。面積的にも設備的にも、これらの条件に見合う物件がきわめて少ないからです。認可外の保育所の多くは貸しビルに入っていることが多いですが、明らかにこの32条を守れていないものが多数あります。

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by chibicco-plan | 2019-06-18 10:00 | ●保育園設計の考え方

『こどものためにで木ること』~内装に係る法規制を考える~ 5

保育所の木造化が進まない理由
なぜ木造の保育所建築がほとんど存在しないのかということについてふれますと、最大の理由は火災です。児童福祉施設最低基準32条によって、2階建てで2階に保育室を設置する場合は準耐火建築物のイ(以下イ準耐と略す)以上でないと認可されません。従来は耐火建築物しか認められていなかったのですが、2階建ての需要を受けて緩和され、イ準耐でも可能となりました。但し、3階以上は今でも耐火建築物でないと認可されません。待機児童は都市部に集中するわけですから、狭い敷地に高密度で建てなくてはいけない保育所が多くなります。その結果、ほとんどの保育所にイ準耐以上が要求されます。それに適合させようとすると、柱や梁などを石膏ボードなどで覆わなければなりませんから、木は全く見えなくなります。木造を選ばれる建築主は木を見せたいという思いをお持ちの場合が多いと思いますので、それでは、ご満足いただけないでしょう。次の写真は、木造ですが、ボードで柱や梁を覆って、準耐火建築物とした保育室の例です。


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イ準耐で木造の軸組を見せる方法として、「もえしろ設計」があります。写真のS保育園は、これを用いて設計しました。(次ページ下)柱や梁等の長期荷重を安全に支持するのに必要な断面に、もえしろ45mmを足して、準耐火性能を付与するという考え方です。例えば独立柱で120角が必要断面だとすると、それにもえしろ45mmを四周に足した210角の柱となりますので、どっしりとした印象の空間になります。長期荷重に対する断面なので、実際にはもっと小さくできる可能性がありますが、一般流通材としては手に入りにくい大きさとなることが多いです。

 木材の燃える速度で制御されるもえしろ設計は、木材の品質に制限をかける必要があり、日本農林規格適合の集成材か、同製材で含水率が15%等が条件になってきます。このJASが曲者でして、なかなかJAS材を供給可能な工場がなく、入手が非常に難しいのです。そこに追い打ちをかけるのが工期です。保育所は補助金を得て実施する場合がほとんどで、その多くが単年度事業です。近年改善されてはきましたが、4カ月そこいらの工期で新築園舎を完成させろという、乱暴かつ非常識極まりないスケジュールを行政からごり押しされることはいまだにありますから、材木の手配に手こずると、致命的な工期遅延が発生します。このような大きな材の供給体制を整備することは、保育所建築で木材利用を促進させるにあたっての、必須条件だと思います。消費者と供給者の両方の努力が必要になってきます。

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材木の手配に手こずると、致命的な工期遅延が発生します。このような大きな材の供給体制を整備することは、保育所建築で木材利用を促進させるにあたっての、必須条件だと思います。消費者と供給者の両方の努力が必要になってきます。


 また木造保育所の場合、平屋であっても床面積が200㎡を超えると準耐火建築物にしない限り、建築基準法で内装制限がかかります。建築基準法は火災を強く意識した法律なので、木造はほかの構造に比べて規制が厳しいのです。これだけを聞くと内装には木が使えないと思ってしまうのですが、逃げ道が用意されています。建設省告示1439号です。厚さ10mm以上の木材を難燃材料(たとえば石膏ボード)の上に貼る、もしくは、1m以内のピッチで間柱や胴縁を壁の内部で火災が伝播しないように配置したうえに10mm以上の板を貼ればよいとなっています。残念ながら、天井は難燃又は準不燃材料以上を要求されますので、普通の木を貼ることはできません。写真のN保育園では、これを使って壁の内装木質化を行いました。


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 内装は、塗り替えをはじめとするメンテナンスはそこまで考えなくてもいいので、木の仕上げをどんどん使える最適な場所だといえます。内装については、各種自然系塗料が出回っており、安心して使用できます。選択の基準としては、成分が100%公開されているかどうかというところです。いいものは、生材をなめても害がありません。色にこだわりを持たれる保育園さまは多いので、色合わせでクレームを招かないように、必ず実際に使う材をペンキ屋さんに支給していただいて、実際に施工するのと同じ状況での塗り見本を作成されることをお勧めします。



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ちびっこ計画 / 大塚謙太郎一級建築士事務所
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by chibicco-plan | 2019-06-11 10:00 | ●保育園設計の考え方

「母里保育園」様と「かにがさか保育園」様が株式会社イケダコーポレーションの冊子に掲載されました

わたしたち「ちびっこ計画」が設計させていただきました「社会福祉法人母里福祉会 母里保育園」様と、「社会福祉法人和坂福祉会 かにがさか保育園」様が、株式会社イケダコーポレーションの冊子「春夏秋冬、健やかな木とともに」に掲載されました。


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株式会社イケダコーポレーションのホームページはこちらです。



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by chibicco-plan | 2019-06-06 11:19 | ●紹介されました

『こどものためにで木ること』~内装に係る法規制を考える~ 4

木育のこと

S保育園の増築工事で内装工事の時期に、5歳の在園児さんを対象に実演会を実施しました。現場監督・現場助手・大工棟梁のみなさんが、道具の説明等を行い、

床板貼りを実演してくれました。最後に質問会を実施しまして、「おうちはどうやって建てるんですか?」という園児の問いに、棟梁は「いろんなお仕事の職人さんが、みんなで力を合わせて建てるんやで」と答えられました。澱みなく自然にこんなに気の利いた答えができるということは、日常からそれを大切に思って仕事をしておられるはずで、素晴らしい棟梁に出会えたなと思いました。この実演会を通して、大人が真剣に仕事に取組む生の姿や、力を合わせて一つのものを作り上げることの大切さなどを、こどもたちが感じ取ってくれたものと思います。

「木育」意味ですが、一般的には「こどもの頃から、木材に接することにより、その良さを体感し、森林の大切さや木材に対する理解を深めてもらう」という程の意味と考えてよいかと思います。しかし、こどもたちは木や森のために生きているわけではないし、むしろ、木や森に育ててもらう立場なのです。そもそもそれらを供給する機能を破壊してしまったのは、こどもたちではなく我々大人の仕業なのです。この定義ですと、我々大人ができなかったこと、若しくはやってしまったことへのつけをこどもたちにまわしているような気がするのです。だから、言うとすれば、木育とは「木」を通してこどもたちの成長を支援するものと考えて、「木の良さも、そして悪さも体感し、生きることへの理解を深めてもらう」という表現にしていただいたらどうでしょう。少しオーバーな気もしますが、それだけの力を「木」は持っていると私は考えています。

 ちょっと贔屓目に言うと、木材は多様性の理解にもつながるのではないかと考えています。例えば、皮むき丸太を柱に使えば、太さも木肌も節の数も割れの様子もすべて一様ではありません。丸太の柱をたくさん使ったN保育園の先生におたずねすると、どうやら、こどもたちには、それぞれにお気に入りの柱があるらしいのです。色の違いでしか変化を持たせられない人工素材と違って、個の存在自体で多様性を持ち得るのは、自然材料の最大の特徴だといえます。こどもたちは、何も言わずともそれを察知して、生活の一部として自然に多様性を理解していきます。

 保育所保育指針には「保育所は、こどもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場である」と示されています。自宅よりも長い時間生活する場ですから、やはり住まいと同等の設えが必要だと思います。


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by chibicco-plan | 2019-06-04 10:00 | ●保育園について執筆・講演